披露宴&『大西洋レストラン』千秋楽

『大西洋レストラン』千秋楽。

劇場入りの前に、帝国ホテルの披露宴会場へ。D社のK会長の結婚式および披露宴の準備が行われている。この披露宴におけるサプライズのひとつで「新郎新婦のなれそめを朗読劇で紹介する」という企画の脚本を依頼されていた。自分の稽古も終盤に差し掛かった時点での急なオファーで余裕はなかったのだけど、数分程度の短いものだし、お祝い事だし、面白そうなので引き受けさせてもらった。
で、この読み手がなんと声優TさんとOさんだという。某アニメ好きとしてはお二人に自分のくだらないホンを読んでいただくだけでも恐縮だ。おまけに当日リハに来て二人に演出をつけろと言われて愕然とする。しかし私の書いたホンだから私が演出するのが筋な訳で、そこはお二人が最高司令官とその息子であろうが、演者としての大先輩だろうが、逃げちゃだめなわけである。
限られたリハ時間の中で、可能な限りニュアンスやイメージを伝える。お二人ともプロ中のプロなので、たちどころにホイホイと仕上げてくださって見事なものだった。
こちらも公演中なので肝心の本番を見られなかったのは残念だが、スタッフさんからは「大受けでした!」とのメールが来てひと安心。


『大西洋レストラン』は昼夜二公演サラリと無事終了。
今回はいろいろと幸福な舞台だった。執筆時点でひとりでウーウーと病み、それが稽古場に入ってからキャスト陣の存在感と演技、H ZETT Mさんのピアノという要素で、不安がドンドン溶けていった。それでも客受けの悪さは覚悟していたのだが、それも初日以降の評判の良さでこちらが拍子抜けするほどだった。

今回の脚本はマグダラなどに比べればだいぶサービス不足である。余白を多く残し、そのかわりエンタメ成分としてはピアノと歌とステージングで十分でしょ?ユーモアはあってもギャグはないよ?という高踏派な作り。天然ロボットやCaccinicaを見て来ている方々にとってはユザワは元々こういう感じだよね、というものでも、昨今のイケメンエンタメ舞台に慣れた観客には肩すかしに思われるだろうと予想していた。私の作品に常につきまとうエロティシズムや、余白の意図に対する受容体がないと、今回の舞台を楽しむ作業はとたんに困難になる。もちろんホンのぶっきらぼうさをキャストの存在感やH ZETT Mさんのピアノでカバーできた事が大きいけれど、私の想像以上に観客の受容感度は高かったようで、それはとても有り難いことだった。
初日に来ていたケラさんが千秋楽も見に来てくれた。自腹で。緒川さんが出ているとはいえケラさんが舞台をリピートするなどとても珍しいことで、ああ本当に気に入ってくれたんだなと嬉しかった。芝居よりピアノを聴きに来たのかも知れないけど。

以下セットリスト。

M0『大西洋レストラン』 脚本執筆以前に、H ZETT Mさんがタイトルイメージから作ったテーマ曲。今回は芝居前後に持って来て、作品全体のテーマ曲とした。

M1『Welcome to Atlantic Ocean!』 船内レストランのシーンが始まるときの曲。賑やかで、これからお芝居が始まりますよ!という期待感を抱かせるイメージでと注文。

M2『ニコラ・テスラ博士』 ダイナモの営業マンのエピソードの後、エレクトリカルなレトロ・フーチャーのイメージでと注文。

M3『バレエ・バレエ』 モダンバレエの前のクラシックバレエ、さらにその前のロマンティックバレエの踊り子を歌った曲。マグダラの『It's Entertainment!』にも通じる、芸事と風俗の未分化状態がテーマ。

M4『ドリアン・グレイ気取りの婚約者』 浮気者の婚約者を持った女の嘆きと、そのしたたかさを歌った曲。

M4.5『(タイトルなし)』 主人公である女性の不安感と芝居上の幾らかの時間経過、キャストの着替え時間を考慮し、なんか一曲入れといてくださいと稽古途中で注文したもの。一小節分のテーマだけ私が提示し、そこからHさんがドコドコと変奏を展開していった。

M5『可哀相な少年』 完全なる耽美楽曲。曲想も歌詞の内容も純耽美系。Caccinicaで演奏しても全く違和感はないだろう。そういえばH ZETT MさんのピアノはCaccinicaのAYAちゃんとはまたタイプは違うのだが、指の強さと早さはほぼ同等で、Hさんのピアノを聴く度に私はAYAちゃんのピアノを思い出していた。AYAちゃんもやっぱり上手いんだよなあ。

『私が十四歳になったら』 楽曲ではないのだけれど、途中で詩の朗読をどうしても入れたかった。これは10年前の天然ロボットの『12のカプリース』という小品中のワンピースだったもので、今回緒川さんに読んでもらったら大層素敵だろうなと思ったのだ。空間密度や芝居とのバランスを考えて当時よりも3分の2くらいに刈り込んである。

M6『調律師のエチュード』 船の沈没前、調律を終えたピアニストがピアノに最後の別れを告げる曲。という設定は後からしかわからないのだけど。脚本における注文には「88鍵を全て鳴らす感じで、バッハのインベンションからリストの超絶技巧になってゆくイメージ。」と無責任に書かれている。そのピアノを最高に鳴らしてあげて、パタッと蓋を閉めて去って行くのが素敵だなと思ったのだ。実際に88鍵全てが鳴っているのかは知らない。

M7『Welcome to Atlantic Ocean!』 流れ着いた島で歌手とピアニストが奏でるリプライズにもならないリプライズ。レストランのオープニングと対照的に、気の抜けたイメージで。


今回の舞台はDVDにもならないし、サントラも出ない。舞台ってもともとそういうものだし。ただH ZETT Mさんの今後のアルバムに楽曲が収録されるという可能性はあるから、『大西洋レストラン』を思い起こすよすがを欲する方はHさん方面にかけあってみたらいかがだろう。

これにて私の『大西洋レストラン』はおしまい。ご来場していただいた方々に多謝。
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by maestro_k | 2013-05-27 12:10 | diary