マーシェーリー、アモー

昼過ぎ、ベッドの上でまどろんでいた。
ドアの取っ手がカチャッといった。
見ると、ゆっくり取っ手が下がり、ドアがそーっと開けられてゆく。在宅時は施錠していないのだ。
誰?知り合い?一瞬にしていろいろ考える。私の住処を知っている人間は10人にも満たないし、連絡もなく突然やって来て勝手にドアを開けるような知人はいない。
じっと見ていると、開いたドアの隙間から、作業服にヘルメットのおっさんが顔を出した。
目が合った。
「…あ、…すみません」
と言ったのかどうかも分からないくらいにボソッと何かをつぶやいて彼は去ろうとした。
「何ですか?」
それには答えず行ってしまった。
作業員風だが、何も名乗らなかったのでどこの誰か判らない。空き巣ねらいで、作業服は周囲の目をごまかす変装なのかも知れない。作業員が呼び鈴もノックも無しでドアをそーっと開けるとは考えにくい。怪しさ100%ではないか。今までタバコを買いに行く程度のときは施錠していなかったが、これからは用心せねば。
せっかくなので、もしおっさんがホモで私に襲いかかって来たらどうなるかなど妄想。帰られちゃったから好みではなかったんだろうけど。

池袋のビックのカメラ館へ。6階の中古コーナーでジャンクレンズを物色。
30分くらい考えるが何も買わず。三越近くのカフェ・ド・クリエへ。
カフェ・ド・クリエは基本的に安普請なチェーン店で高級感はあまりないのだが、池袋の店は空間が広くてゆったりしているのが気に入っている。長居するのには気楽だ。ただしそれは回転率の悪さでもあるので、私の気に入ったカフェはどんどん潰れてゆく。この店もいつまであるか判らない。
と、突然ある曲が頭を回り始める。「♪マーシェーリー、アモー」という歌い出し。タイトルは知らないが、誰でも聴いた事がある曲だ。『あの頃ペニー・レインと』の中で印象的に使われていた。
『あの頃ペニー・レインと』という映画は、タイトルだけだと切ない青春ドラマのようだ。
そのイメージはあながち間違いではないのだけれど、主人公は若くしてロック評論家への道を歩み出した少年で、バンドのグルーピーであるペニー・レインと出会うという設定。
なので、70年代のロック音楽の現場が舞台になる。ろくでなしだらけの、華やかで刺激的な世界。主人公の純粋さと、彼を取り巻く世界のバランスが新鮮だった。
ミュージシャンの慰みものであるペニー・レイン。傷心の彼女がホテルの部屋で薬物を大量摂取し、危険な状態になる。主人公はホテルドクターを呼ぶ。駆けつけたドクターたちに介抱され、ペニー・レインはバスルームでゲーゲー嘔吐する。彼女を愛している主人公はそれをじっと眺めている。
このゲロ吐きシーンで「♪マーシェーリー、アモー」と来るのだ。トンチンカンな感じなんだけど、みっともない切なさが良かった。

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by maestro_k | 2006-05-14 02:48 | diary