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いまいちな日

生きていると、どうも今日に限っていろいろ上手く行かないなあという日がある。

朝、注文してあったモンブランのマイスターシュテック149が届く。いわゆる文豪万年筆。ほうほう、と眺めていたら仕事の電話。試し書きついでにサラサラとメモを取ってみる。快適だ。
所用で30分ほど外出して戻り、さて改めて書き味を試そうとしたところ、149がどこにも見当たらない。散らかりまくった部屋のどこに消えたのか、あちこち探しても出て来ない。せっかく一生モノにしようと思って購入したのに、わずか3分間ほどメモを書いて無くしてしまった。1分あたり2万円以上か。高い試し書きだった。

そして先月末に入金されると思い込んでアテにしていた仕事のギャラが今月末になることが発覚。モンブランなんか買ってる場合じゃなかった。そして無くしてる場合じゃなかった。

さて、イコンタ・スーパーシックスの「無限遠が出ない疑惑」を追求する為に、こんなものを製作。
いまいちな日_f0056516_2228843.jpg
ピントを確認する為のスクリーン。本当は磨りガラスが良いのだが買いに行くのも金を出すのも面倒なので、不要なCDケースを切り取ってヤスリでザラザラにした。
フィルム面に取り付ける。
いまいちな日_f0056516_22303975.jpg
カフェの様子が上下左右逆さまに映っている。
いまいちな日_f0056516_22312898.jpg
これをルーペで見る訳だが、細か過ぎて良く判らない。やはり改めてテスト撮影することに。いちいち時間と金がかかるな。

公園の風景。
いまいちな日_f0056516_22331333.jpg
街灯のあたりを拡大してみる。ピントは無限遠、絞りは開放F2.8。
いまいちな日_f0056516_22343286.jpg
三本の街灯のうち、手前の物にピントが来ており、一番奥はボケている。やはり無限遠が出ていない。

f22まで絞ってみると、
いまいちな日_f0056516_2236313.jpg
奥までピントが合い、後ろのビルの窓の柵も一本ずつ見える。何枚か絞りを変えて撮ったところ、f11以上ならば何とかなるようだ。
両方でピントが合っている手前の街灯に関しては、描写はほぼ変わらない。前回のf8程度の絞りでは無限遠が被写界深度(ピント範囲)に入り切らず、ピンボケ状態になったということだろう。つまりテッサーの描写性能が悪いのではなく、単に調整不足ということだ。

という訳で購入店に持ち込む。対応した店員さんは20代後半らしき女性だった。
「先日こちらで買わせていただいたこのカメラなんですけど、無限遠が出てないみたいなんですよ」
「(キョトンとした顔で)ムゲンエン?」
「無限遠っていうのは、あのー、風景とか写した時の、一番遠くにピントが合うところなんですけど、」
「はー、」
テメエコノヤロ、中古カメラ屋の店員がなんで無限遠も判らないんだ!という怒りを抑えつつ、
「調整をお願いできませんかね」
「修理という事ですか?」
「いえ別に部品が壊れてるとかではないんで、修理ではなく、単にピント調整をしていただくか、もしくは自分でできる方法があるなら教えていただければ自分でやりますけど」
「業者さんに出してみないと判りませんねえ」
そりゃキミに判るなんて思ってないよ。遠回しに誰か別のベテラン店員に変わってくれって言ってるんだよ。

無限遠が出てないというのはカメラとしては致命的で、風景撮影に使われる事の多い中判カメラではなおさらだ。そもそもカメラのレンズは無限遠での描写が基準であって、それが写せない事はたいへん都合が悪い。ジャンク品や現状渡しの委託品として買ったならともかく、整備済みの中古品として買った以上、不具合が生じたら販売店が責任をもって調整してくれてもいいんじゃないのかしら。
しかしそんな私の思いをこの「ムゲンエン?」の店員は全く理解していないし、彼女の関心は私が有償修理を依頼するか否かだけであるようだ。後ろでベテラン店員がちょっと気にした様子でこちらを伺っていたが、彼女は全く助っ人を呼ぶ気配も見せず、カメラの症状にも興味を示さず、ただ私の判断を待っている。
「じゃあ、もうちょっと模索してみます」
と言って店を後にする。無限遠が出なくても人撮り専用にすればいいし、どうしても風景が撮りたければ三脚を使って絞り込めばいい。仕事用のカメラではないから、そんなにシビアになることも無い。とりあえずテッサーの名誉が回復されただけでも良しとしよう。

他にも駅や銀行で私を苛立たせる細かな出来事がいくつかあり、鬱々とした気分で帰宅。するとポロッと149が現れた。ジャケットの下に着ていたパーカーのポケットに入っていた。なんだキミ、ずっと一緒にいたのか。
いまいちな日_f0056516_2322613.jpg
というわけで最後はちょっと救われる。私は何も失っていない。

by maestro_k | 2010-03-05 23:51 | diary